連載コラム - ヨモギ -
- 森の素材研究所
- 2023年12月30日
- 読了時間: 9分
「ハーブの女王」と言われているヨモギには、どのような作用があるのでしょうか?
ホームページ連載コラム、今回は「ヨモギ」の代表的な特徴についてご紹介します。
※「本コラムでご紹介している内容は、弊社の製品であるヨモギと笹のエッセンスⅡの効能効果とは直接関係ありませんのでご注意下さい。
ヨモギと笹のエッセンスⅡの特徴につきましては、本コラムとは別の「商品紹介」と「お客様の声」のページをご参照下さい。」
▪️ヨモギとは
ヨモギは別名「餅草」と呼ばれており、よもぎ餅でお馴染みの方は多いのではないでしょうか。私たちが暮らしている街の道端、空き地、公園など、日本列島至るとことに生えている薬草です。春先には勢いよく伸び、高さが1メートル近くなることもあります。春の若葉は、香り高く栄養素も多いと言われています。

写真:滋賀県のヨモギ
ヨモギは中国漢方生薬のバイブルである本草綱目(ほんぞうこうもく)にも記載されているほど、薬効が卓抜しています。
このように、古来から有望な薬用植物であったヨモギですが、近年では様々な研究成果によりヨモギの活性化学物質が分析され、抗マラリア作用、抗酸化作用、鎮痙作用、駆虫作用、神経保護作用、抗炎症作用、および抗菌作用が科学文献にて紹介されています。
▪️緑色の天然色素
ヨモギの緑色の天然色素は他の植物や藻類と同じクロロフィル(葉緑素)によるものです。
このクロロフィルは細胞内の葉緑体にあって、光と水と二酸化炭素から有機物を合成する光合成に不可欠な成分です。クロロフィルは植物の成分ですが、人間の血液の赤血球の主要成分であるヘモグロビンの構造と似ているので、食事で摂取されたクロロフィルは、血液中で鉄と結合し、赤血球や筋肉のヘモグロビンなどの色素に使われます。
また、クロロフィルには人間の体内に取り込まれたダイオキシンや有害なミネラルなどを吸着して排出させる解毒作用があります。
その他にもクロロフィルには血管内のコレステロールを吸着する働きがあるため、コレステロールを抑えて、血液の流れを良くする働きがあります。
そして、クロロフィルには細胞を活性化させる働きがあるため、筋肉を維持したり、ケガや傷の治りを早くするほか、病的状態にある細胞を健康な状態にする薬理作用があります。
▪️リラックス効果
ヨモギの香りを嗅いで心が安らいだ経験はありませんか?それはヨモギの精油成分のおかげです。
ヨモギの香り成分(精油成分)であるシネオール(別名ユーカリプトール)は、自律神経を整えて、高ぶった神経を鎮静化させ、睡眠の質を高めてくれる働きがあります。
そして、ヨモギの代表的な香りであるβ-カリオフィレンは、女性ホルモンに働きかけて整えてくれる効果がありますので、個人差はありますが体にだるさや痛み、精神的に不安定になりイライラしている方にお薦めの効果です。
▪️豊富な栄養素
ヨモギには様々なビタミンやミネラルが含まれ、βカロテン、タンパク質、クロロフィル、食物繊維なども豊富な栄養満点の緑黄色野菜です。ミネラルにはカルシウム、鉄、カリウム。ビタミンにはビタミンA、ビタミンB1、B2・ビタミンC、ビタミンKが豊富で、ビタミンKに関しては野菜の中でもトップクラスの含有量を誇ります。
また、βカロテンについては、ほうれん草の3倍とも10倍とも多く含まれていると言われています。
※βカロテンとは「ガン抑制」や「免疫力の強化」や「動脈硬化を予防」など体を丈夫にしたり、アンチエイジングに効果的だったりと健康に重要な栄養素。
※ビタミンKとは「止血作用」や「丈夫な骨づくり」に必要な栄養素。
▪️活性酸素消去能
熊本大学医学部の前田浩教授は、200種類以上の野菜、山菜の抗リピッドラジカル活性(活性酸素消去能)を測定され、ヨモギの熱水抽出液は活性が最も強く、2万単位でブロッコリーの100倍強く、さらに水で抽出した場合は野菜の中で最高の5万単位となっております。これはヨモギががん予防に有効であることを示唆しています。
また、お茶20種類の抗酸化力を比べてみると、測定した20種類のお茶の中で一番高い数値。これはヨモギがガン、糖尿病、動脈硬化など万病の予防に有効であることを示しています。
<野菜抽出液の抗腫瘍作用と抗脂質作用>
前田浩著「活性酵素と野菜の力」より

抗脂質ペルオキシラジカル(抗脂質パーオキシラジカル)とは、 脂質が酸化される場合、ヒドロキシラジカルが脂質を攻撃して 酸化すると脂質ペルオキシラジカルという物質に変化しますが、 この脂質ペルオキシラジカルは隣の脂質を攻撃して過酸化脂 質となります。 このようにひとつの活性酸素がエンドレスな反応を引き起こし、 大量の酸化物質を発生させます。

萵苣(ちさ)とはレタスの和名
▪️ヨモギエキスとは
ヨモギエキスとは、熱水で抽出し、真空減圧濃縮することにより揮発性の成分も抽出したエキスです。
▪️ヨモギエキスの抗腫瘍に関わる主な成分
古代から有望な薬用植物であったヨモギは、現代医学での使用のために研究され、ヨモギとその活性化学物質は、抗マラリア剤、抗酸化剤、細胞毒性、鎮痙剤、駆虫剤、神経保護剤、抗炎症剤、および抗菌剤を有すると紹介されています。
そして、今回のコラムではヨモギの抗腫瘍作用に関する科学文献についていくつかご紹介します。
[ Artemisinin(アルテミシニン) ]
Artemisininは、鉄イオンと反応してフリーラジカルを産生する特徴があります。そして、がん細胞内には正常細胞と比較して鉄イオンが多く含まれているため、Artemisininはがん細胞を選択的に障害することになります。
[ Arglabin(アルグラビン) ]
Arglabinは、EGFR受容体チロシンキナーゼを阻害して、前立腺癌細胞の増殖を抑制し、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導します。
[ Yomogin(よもぎん) ]
伝統的な東洋の薬草であるヨモギから単離された活性化合物であり、腫瘍細胞の増殖を阻害することが示されています。-中略-
Yomoginで処理したHL-60細胞は、DNA断片化、アガロースゲル電気泳動におけるDNAラダーの形成、アネキシンV標的ホスファチジルセリン残基の外在化など、アポトーシスのいくつかの特徴を示した。 Yomoginがカスパーゼ-8、カスパーゼ-9、およびカスパーゼ-3の活性化を引き起こすことを観察しました。
さらに、YomoginがBid切断、サイトゾルからのBaxのミトコンドリア移行、およびミトコンドリアからのチトクロムc放出をカスパーゼ-8依存的に誘導することを実証しました。
総合すると、Yomoginはアポトーシスの強力な誘導物質であり、カスパーゼ-8の活性化、Bid切断、Baxのミトコンドリアへの移行、およびその後の細胞質へのチトクロムcの放出を介してその活性を促進し、抗がん活性の潜在的なメカニズムを提供することを示しています。
(参考文献)
Biological and Pharmaceutical Bulletin
Induction of Apoptosis by Yomogin in Human Promyelocytic Leukemic HL-60 Cells
2004 年 27 巻 7 号 p. 1106-1111

▪️ヨモギエキスの最新の研究から
研究報告.1:糖尿病に対して有用であることが以下のような研究結果で示唆されています。
・ヨモギエキスはglucose transporter 4 translocation を介して培養L6筋細胞のglucoseのuptake を上昇させると思われた27)。
・ヨモギエキスから見出されたflavoneであるeupatilinは、2型糖尿病マウスのインスリン分泌を上 昇させながら肝臓および血液中の糖代謝を活性化させる重要な役割を持っている28)。
27)Yamamoto N., Ueda M., Kawabata K., Sato T.,Kawasaki K., Hashimoto T., Ashida H.: Artemisia princeps extract promoted glucose uptake in cultured L6 muscle cells via glucose transporter 4 translocation.Biosci. Biotechnol. Biochem., 74, 2036-2046, 2010.
28)Kang Y. J., Jung U. J., Lee M. K., Kim H. J., Jeon S. M.,Park Y. B., Chung H. G., Baek N. J., Lee K. T., JeongT. S., Choi M. S.: Eupatilin, isolated from Artemisia princeps Pampanini, enhances hepatic glucose metabolism and pancreatic beta-cell function in type 2 diabetic mice. Diabetes Res. Clin. Pract., 82, 25-32, 2008.
研究報告.2:ヨモギエキスが免疫系に有用であることが以下のように認められています。
・ヨモギエキスは、自己免疫疾患や臓器移植拒否反応の治療に有用と思われる31)。
・ヨモギエキスは、activated T細胞に免疫抑制効果をもたらすと思われた32)。
・ヨモギは、炎症性サイトカインにおけるIL-6 やTNF-alphaの生合成をregulateし33)
・IgE-madiated の 皮膚アレルギー疾患で出現する受動皮膚アナフィラキシーの予防に有用であることが示唆された34)。
31)Chang S. H., Jung E. J., Park Y. H., Lim D. G., Ko N.Y., Choi W. S., Her E., Kim S. H., Choi K. D., Bae J.H., Kim S. H., Han D. J., Kim S. D.:Anti-inflammatory effects of Artemisia princeps in antigen-stimulated T cells and regulatory T cells. J. Pharm. Pharmacol., 61,1043-1050, 2009.
32) Kim Y. D., Choi S. C., Oh T. Y., Chun J. S., Jun C.D.:Eupatilin inhibits T-cell activation by modulation of intracellular calcium flux and NF-kappaB and NF-AT activity. J. Cell Biochem., 108, 225-2236, 2009.
33) Bae E. A., Min S. W., Lee B., Kim N. J., Baek N. I.,Han E. J., Chung H. G., Kim D. H.: Antiasthmic effect of fermented Artemisia princeps in asthmic mice induced by ovalubumin. J. Microbiol. Biotechnol., 17,1554-1557, 2007.
34)Lee S.H., Bae E. A., Park E. K., Shin Y. W., BaekN. J.,Han E. J., Chung H. G., Kim D. H.: Inhibitory effect of eupatilin and jaceosidin isolated from Artemisia princeps in IgE-induced hypersensitivity. Int.Immunopharmacol., 7, 1678-1684, 2007.
研究報告.3:がんに対して有用であることが以下のような研究結果で示唆されました。
・ヨモギエキスから見出されたflavoneであるeupafolin は、Hela 細胞におけるapoptosisを誘導した。それは、mitochondrial membrane potential(DeltaPsi(m))のBcL-2-dependentな減少によって起こるcaspase-3、-8、-9 のcaspase-dependent pathway を介しているものと思われる。29)
・ヨモギ水性エキスは、ヒトbreast cancer MCF-7 cellのapoptosis を誘導した。それは、breast cancer 治療に対して有効なadjuvantとなりえると思われる。30)
29)Chung K. S., Choi J. H., Back N. I., Kang E. K., Chung H. G., Jeong T. S., Lee K. T.: Eupafolin, aflavonoid isolated from Artemisia princeps, induced apoptosis in human cervical adenocarcinoma HeLa cells. Mol. Nutr.Food Res., 54, 1318-1328, 2010.
30)Sarath V. J., So C. S., Won Y. D., Gollapudi S.:Artemisia princeps var orientalis induces apoptosis in
human breast cencer MCF-7 cells. Antiocancer Res., 27,3891-3898, 2007.
研究報告.4:ヨモギに含まれるアルテミシニンは、鉄を多く含む細胞に反応する特徴を持ちます。
マラリアはマラリア原虫が体内に寄生することで感染しますが、アルテミシニンは、赤血球に含まれる 鉄に反応し、フリーラジカル(分子の中にある、通常2つで対になって安定している電子が、ひとつだけ 離れて存在すること)を発生させて、赤血球に寄生するマラリア原虫を死滅させます。 そして、がん細胞も増殖するためには多くの鉄が必要なため、ガン細胞には正常な細胞よりもたくさん の鉄が含まれています。 つまり、マラリア原虫に寄生された赤血球とガン細胞では「鉄を多く含む細胞」という共通点があります。 そのためアルテミシニンは、正常な細胞には働かず、鉄の多いガン細胞にフリーラジカルを引き起こし、 ガン細胞にダメージを与え増殖を抑制します。
参考文献:ヨモギの抗酸化作用についての研究
関西医療大学保健医療学部 関西医療大学紀要, Vol. 6, 2012
<商品紹介>
「ヨモギと笹のエッセンスⅡ」で使用しているエキスの性能
▪️ヨモギ、クマイザサ、長命草、韃靼そば、オオイタドリ、アマチャヅル各濃縮エキスの抗酸化力


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